High Wire1の著者Angela Huyue Zhang氏へのインタビュー
以下、感想メモ
- 中国は非常に情報統制に成功している。監視社会は国民から支持を集めている。アメリカ人は想像以上に中国のことを知らない、と考えた方がいい。
- 中国社会ピラミッドの頂点から最高指導部、規制当局、と続く。このトップの意向を理解することが重要。このピラミッド下で働くということは、仕事は政策と密接につながる。
- 企業が政府と対立することはまずなかった。アメリカは逆で、例えばデータパイプラインを制限する連邦レベルの法律はないことからも、企業が主体となっている。ただトランプ大統領就任以降、大手テック企業が大統領を取り囲んでいるのは、中国よりも癒着あるいは縁故資本主義のような様相を呈している。
- 最近も監視と統制が効いているかについては、Didiの事例がある。中国最大の右派プラットフォームDidiは中国サイバー空間管理局(CAC)の反対にもかかわらず、IPOを強行した。Didiは成功した企業だが、アメリカに機密データを引き渡した裏切り者、という世論になっている2。
- ジャック・マー氏のIPL停止でも同じく批判的な世論が形成された。中国はメディア機構を含めて官僚機構の一部である。ここに論理的、法的根拠はない。ジャック・マーの件は、アントグループのIPOと金融規制局との対立に関連するものだろう。
- グレートファイアウォールはアメリカ企業の中国進出を阻んでおり、今後も中国国内では中国企業が勝つだろう。中国は1からものを作るのは得意ではないが、学んで使いこなすのが得意。そして公正に市場を獲得した。
- DeepSeekは1年以上前から中国では有名だった。DeepSeekのような中国では有名だがアメリカでは過小評価されているサービス、プロダクトがまだ多くある。
- 中国のテック企業に対する規制には一貫性はない。緩い時もあれば、厳しい時もある。少なくともAIに関して指導は事前審査のようなものは行なっておらず、自由に活動している。逆に言うと、中国が指導しているものに関してはあまりうまくいっていない。
- 中国は不況の最中であり、若者は仕事を欲している。指導部は新しい経済への変革と新興テック企業の波をよく理解している。アメリカによる制裁は続くので、中国は今後も自給自足しなければならないという切迫感を感じている。
- アメリカによる半導体規制は結果中国企業を強くしていたのは事実。中国は10年遅れと言われていたが、その差は楽観的に見ている。
- トランプは米中関係を悪化にかなり寄与している。彼の中央集権化は中国のようだ。
- 中国最大の敵は米国ではなく自滅だ。中国には参入はないため、テクノロジーへの規制が市場を崩壊させる可能性がある。
- アメリカ最大の敵は中国ではなく、民主主義を自ら台無しにしてしまうこと。
米中対立からAI脅威論に話題が移ったあたりで流し聞きしたので、メモは省略。
High Wire: How China Regulates Big Tech and Governs Its Economy, Angela Huyue Zhang (Amazon) ↩︎
罰金を支払うことになった模様。https://ir.didiglobal.com/news-and-events/news/news-details/2022/DiDi-Sincerely-Accepts-CAC-Decision-Commits-to-Comprehensive-Self-assessment-and-Rectification/default.aspx ↩︎