エビデンスを嫌う人たち: 科学否定論者は何を考え、どう説得できるのか? リー・マッキンタイア

非科学を信奉する人々を説得することは可能か? 著者は実行に移すべく、コロラド州デンバーで開催されたフラットアース国際会議2018に潜入する。地球平面説を信じる自らをフラットアーサー、球体派はグローバリストと呼んでいて、笑ってしまったが、これは笑い事ではない。

質問をしたのは男性で、隣の席には五、六歳の女の子がすわっていた。彼は言った。「(地球平面を信じる)娘が学校でいじめられないようにするには、どうしたらいいでしょう? われわれは大人だから我慢できますが、この子は親の信念のせいで嫌がらせを受けています」

第1章 潜入、フラットアース国際会議

著者と同じく、胸を痛める。フラットアーサーは無害な存在で無視するのが一番、と考えるのは間違っている。彼らは組織化され献身的であり、科学の脅威と言える。

  • 科学否定は陰謀論と深く結びついている。科学否定論者が勧誘するときは、陰謀論を信じやすい人をターゲットにしている。
  • 科学否定者の拠り所は科学的根拠ではなくアイデンティティである。彼らを説得するには、科学的事実を並べるアプローチではなく、彼らのアイデンティティを尊重しつつ信頼を得ることが重要である。
  • 科学否定は政治利用されやすい。経済活動と関わる地球温暖化否定はやワクチン否定はその典型であり、特に保守派が否定する傾向にある。一方で、遺伝子組み換え作物(GMO)の否定については保守派やリベラル派との相関は低い。

科学には不確実性がつきもので、新たな証拠によりその主張が変わることがある。むしろそれこそが科学であり、その不確実性を教育に取り込むことが必要と著者は説く。

原著が出版されたのは、第1次トランプ政権からバイテン政権へと政権交代の時期。著者は、新型コロナウイルス対応や地球温暖化対策に対して科学否定の発言を厭わないトランプの交代に状況の改善を願って本書を締めた。しかし2025年、第2次トランプ政権が誕生してしまった。ワクチンや地球温暖化対策への投資が順調に削られていく。トランプのアイデンティティを尊重しつつ、科学的事実を説得することは、果たして可能なのだろうか。AIが解決してくれるかもしれない1

メモ: 科学否定論者の5つの類型

  1. 証拠のチェリーピッキング
  2. 陰謀論への傾倒
  3. 偽物の専門家への依存
  4. 非論理的な推論
  5. 化学への現実離れした期待

  1. これは科学否定ではなく陰謀論について実験 ↩︎