温暖化による食料生産の悪い変化が起きていたところに、2022年に勃発したロシアのウクライナ侵攻で、食料サプライチェーンにも大きな変化が起きた。仮にウクライナ侵攻が何かしらの解決をしたところで、ロシアもウクライナも自国の復興に集中するため、かつての輸出国に戻るには時間がかかるだろう。まさに世界的な食料危機が現実的に。その論点をまとめた本。
小麦
日本の小麦輸入は主にアメリカ、カナダ、オーストラリアだが、世界的にはロシアやウクライナが小麦の輸出大国。日本人にはなかなか伝わらない、世界の主食が脅かされているという危機感。
バイオ燃料
基本的には過剰に生産されたトウモロコシや大豆などがバイオ燃料として転用される。しかし、食用、飼料用、燃料用それぞれの需給のバランスが難しく、EUは補助金政策に苦慮してきた。
途上国支援
食料の自給は自国経済発展の要である。日本を含むアジア諸国は、戦略的に主食(コメ)を自給できるように保護してきた。一方でアフリカは主食(トウモロコシなど)を含め援助に頼ってきたため、アフリカの経済発展は脆弱である。自国の過剰生産を途上国に押し付けた結果、とも言える。そもそも工業化された先進国の食糧生産に対して、アフリカなどの途上国か価格で勝つのはほぼ不可能である。
化学肥料
食料生産の増加は線形の一方では人口増加指数関数的であり、いずれ食糧危機になる、という「マルサスの罠」がある。今の所この予想が外れているのは、化学肥料と農薬による生産効率化の恩恵が大きい。化学肥料はリン、カリウム、窒素の3つ。リンとカリウムは鉱山があるか、窒素はエネルギー生産大国かどうか。ロシアは世界の化学肥料を支える重要な国であり、ウクライナ侵攻は化学肥料が高騰し、世界的な材料費高騰の原因である。
他にも宗教的に都合の良い鶏肉や、温暖化による生産地域の北上など、多くの論点が解説されている。