EUのAI法は段階的な適用が決まっており、発行から12か月後の2025年8月2日に、つまりあと数日で、第5章の汎用目的型AIモデルへの適用や、第12章の汎用目的型AIモデルのプロバイダーへの罰則(ただし第101条の制裁金は除く)が適用される。以前、EU AI法のリスクレベルをメモしたが、PwCがより分かりやすい図とともに解説していた。

で、その数日後に適用される第5章 第51条が面白い。

  1. A general-purpose AI model shall be presumed to have high impact capabilities pursuant to paragraph 1, point (a), when the cumulative amount of computation used for its training measured in floating point operations is greater than 10(^25).

Article 51: Classification of General-Purpose AI Models as General-Purpose AI Models with Systemic Risk | EU Artificial Intelligence Act

ここで汎用モデルを「学習が累計FLOPで \(10^{25}\) を超えるもの」としている。何を持って汎用とするか、という問いに対して、このような指標を入れたことは、今後の日本などのガイドラインにも一定に影響を与える、かもしれない。

企業が自主的に準拠できるように設計されたガイドライン、汎用モデル提供者の行動規範(General-Purpose AI Code of Practice、CoP)も展開されている。EU AI法の第53条 透明性と、第55条 安全性・監督、に対応する。法的拘束力はない任意のガイドライン。元々は5月2日公開予定だったが延期され、7月10日に最終版が公開された。

以下の3つの柱から構成されている。

  • 透明性: モデルの性能、制約、用途を文書化とその提出が記載。docx形式のテンプレートも公開されているが、Model Cardsよりもだいぶめんどくさそう
  • 著作権: 特に学習データに対する合法性やオプトアウト、概要の公開などが記載
  • 安全性・セキュリティ: システミックリスクの評価・管理について記載。重大インシデントの報告義務や、リスク低減策の整備。