ただの昔話
消尽ルールにより修理は特許侵害からは切り離されるが、再構築に関しては議論があり、修理と再構築の境界は曖昧である。「修理する権利」(メモ)に書かれていた内容で、これを読んだとき、CDコピーソフトが提供できる「私的複製」の協会の議論を思い出した。修理の権利とは関係なくて、あえていうなら所有権の話。
今でこそCDへの書き込みはOSでサポートされているが、CD-Rが普及した1990年代後半〜2000年代前半は、専用のCD書き込みソフトを使用するのが一般的だった。当時、そのCD書き込みソフトを開発した会社で主にテスターとしてアルバイトしていた時に聞いた話。
メジャーなCD書き込みソフトは、同時にCDコピー機能も備えていた。そのコピー機能で、いわゆるコピーガードがついたCD(CCCD)は対応するのかどうか。特に、セクションの読み込み順序を意図的に変える行為について、社内で大きな議論になった。
CCCDは、わざと間違ったエラー訂正符号を差し込むことで読み取りエラーにするCactus Data Shield(CDS)や、データセクションとして認識させるフェイクTOC1を挟むKey2Audioなどがある。いずれも、CD-ROMドライブで読み取りできなくすることで、データコピーを防いでいた。CCCDは一部の音楽CDプレーヤーで再生できないことで批判を浴びたが、特にKey2AudioはMacととても相性が悪かったらしい。
当時の議論はほとんど覚えていないが、おそらくKey2AudioのようなフェイクTOC形式についての議論だったと思う2。これらのガードは、つまり正しいセクション順に読めばいい話なので、原理的には、コピーは可能である。
ここで議論となるポイントは、このような「意図的に読み込み順を変える行為」は、私的複製なのかどうか。というのは、合法的に認められている私的複製にも例外があり、「技術的保護手段を回避しての複製」がその例外である3。議論の結果、読み取り順を意図的に変えるのは技術的保護を意図的に回避していると解釈するのが自然、として「Key2AudioのようなコピーガードがかかっているCDのコピーには対応しない」という結論に至った。
ただ、競合のCD書き込みソフトは普通に対応しており、何かしら別の解釈で「私的複製」の範疇とすることも可能だったかもしれない。幸い、Key2AudioのようなCCCDは市場にほぼ出回らず、mp3取り込みの普及によりCDのコピーガード自体が廃れ、売上的な面では全く影響がなかった。
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あまりにも昔なので、間違っているかもしれない ↩︎
OSSのリバースエンジニアリングで「技術的保護手段の回避」は認めらるケースもある。例外のさらに例外。この辺りの議論は非常に難しい。 > (平成20年第7回)議事録 | 文化庁 ↩︎