命題とは、真か偽かのどちらかの値を持つ文。お堅くいうと、真偽が確定し得る数学的な主張のこと。その命題を表すための記号を命題変数といって、\(A,,B,C,…\)と表す。これ以上分解できない最も基本的な命題を原始的命題という。
命題を命題結合子で繋いで新たな命題を作ることができる。命題結合子は「否定、かつ、または、ならば」の4つで議論され、それぞれ \(\neg\)、\(\land\)、\(\lor\)、\(\to\)の記号で表す。
命題変数\(A,,B,C,…\)と命題結合子\(\neg,\land,\lor,\to\)を組み合わせて作られる記号列を論理式と呼ぶ。厳密には、式として成り立っているもののみで、例えば\(((\neg\to A\)は意味を成さないため論理式ではない。
命題が真か偽かを示す値を真理値と呼ぶ。\(\mathbb T\)(真)と\(\mathbb F\)(偽)と表す。命題変数全体の集合\(\mathsf PV\)から心理地の集合\({\mathbb T, \mathbb F}\)への関数を、真理値の割り当てと呼ぶ。真理値の割り当ての全体の集合を\(\mathsf{Val}\)と書く。
\(\nu\)を真理値の割り当て、\(\varphi\)を論理式とする。\(\nu(\varphi)=\mathbb T\)のとき、\(\varphi\)は\(\nu\)で真であるといい、\(\nu\vDash\varphi \)と書く。\(\nu(\varphi)=\mathbb F\)のときは\(\varphi\)は\(\nu\)で偽であるといい、\(\nu\nvDash\varphi \)と書く。
\(\vDash\)と\(\nvDash\)のターンスタイル記号出てきたところで、恒真式が説明できる。
恒真式によって表現される命題を恒真命題という.恒真命題とは原始的命題の真偽によらず命題の形だけから真であることが判断できる命題のことである.恒真命題のことをトートロジー(tautology)ともいうが,命題と論理式の区別が重要な意味を持たない場合にはトートロジーという言葉で恒真式のことを意味する場合もある.
菊池 誠, 不完全性定理 p26
この本の第2章「命題論理」の冒頭にあったトートロジーの論理式。数学的論理学をやっている人には当たり前の説明だったのかもしれないけど、自分は本書が発売された10年以上前この説明を読んでいたく感動したのを覚えている。
もっとシンプルには、命題変数にどんな真理値を割り当てても、常に真となる論理式のこと、と説明できる(はず)。 \(P\lor\neg P\) (いわゆる排中律)、\(P\to P\)みたいなやつ。なんだけど、上記の説明の方がとてもきれい。
日常では、修辞学的な意味でもっと気軽に「同じことを繰り返す表現」に対して使っている気がする。なんで突然こんなメモを書いたかというと、今読んでいる本が、やたらトートロジーっぽい言い回し多くて、それで思い出したから。それだけ。