信頼性工学におけるアレニウスの法則(温度加速)(メモ)に続いて、バスタブ曲線に関するメモ。

機材や普請の故障率を時間に対してプロットすると、下記のような三相構成を持つ曲線になる、と言われている。

  • Infant Mortality / Early Failures: 出荷・使用開始直後、高い故障率から始まり、時間と共に故障率が低下していく
  • Useful Life / Random Failures: 故障率が比較的安定・低レベルに落ち着き、時間に対してほぼ一定という仮定がされる
  • Wear-Out Failures / Aging Failures: 使用が進むにつれて部材の疲労・劣化が蓄積し、故障率が徐々に、また加速的に上昇していく

1バスタブ曲線

バスタブ曲線

バスタブ曲線1

この3段階を、バスタブ曲線、あるいは故障率曲線と呼ぶ。

このバスタブ曲線に対して、批判的に検討した論文が面白かった。2003年の論文。

  • Infant Mortality(初期故障率)が時間と共に減少する、という現象は滅多に観測されない可能性があると指摘。ハザード関数に対して混合分布を仮定しても成立しない
  • 初期故障は早期に落ちるというweak sister仮説を前提としても、故障率が最初高くて徐々に低くなる、という形状になるわけではない

総じて、安直にバスタブ曲線を当てはめるのは慎重になるべき。特に初期故障率に関しては、焼き込みや環境応力スクリーニング2等を行い、データから故障率形状を見積もることを提言している。

アレニウスの法則やバスタブ曲線は、下記のスパコン富岳の冷却についての記事で、紹介されていた。


  1. 故障率曲線 - Wikipedia ↩︎

  2. どちらも製品の初期故障率を減らすための工程・試験手法のこと。焼き込みとは、出荷前に一定期間、意図的に動作・加熱・負荷をかける工程。環境応力スクリーニングとは、温度・湿度・電圧など複数の環境ストレスを短時間で印加して、潜在欠陥を炙り足す方法 ↩︎