Xにて、ノートPCでのメモは手書きノートに比べて学習を阻害している、と言う研究が紹介されていたが、参照されている論文が10年以上前だったので1、最近の研究はどうなっているのか、と調べたのでメモ。
手書きの方が集中しやすいし、質が高い
この2022年の論文では、手書き方式とデジタル方式のノート作成が学業成績に及ぼす影響についての既存研究を、系統的レビュー・メタ解析したところ、その2つに有意差は見られなかった。影響因子として特定されたものも、デジタル機器特有の注意散漫効果によるものとして部分的に説明可能である。今後この手の実験では、そうした調整因子を特定できるような実験プロトコルが必要である、という提案。
いち一般人からすれば、学習に集中できる環境を作ることは大事、という至極当たり前の提言でもある。
一方でこちらの2024年の論文では、上記と同様に講義内容を手書きとタイプ入力2つのノート作成について比較実験した既存研究をメタ分析し、手書きでノートを取りその後復習する学習方法が、タイピングに比べて学業成績の向上につながるとしている。タイピングはノート量が増える一方、手書きは記憶定着の学習効果がある。
本論文はITmediaでも去年末に取り上げられていた
2つの論文の結論がずれているが、これはノート作成と学業成績の関係にはさまざまな交絡があり、因子によって変わるからだろう。
関連する実際の実験論文についてのメモは以下
- The impact of digital distraction on lecture note taking and student learning: 模擬講義における手書きとノートPCそれぞれのノート作成時の効果検証。ノート作成方法によらずデジタル機器の気晴らしが悪影響を及ぼした、という結果。
- Taking notes with different writing devices influences learning processes but not performance: an EEG study comparing ink pens, digital pens, and keyboards: いくつかの筆記デバイスでノート作成を行ってもらい、脳波を見たところ、即時的なパフォーマンス結果には有意な差は見られなかった。
- Computer versus longhand note taking: Influence of revision: 講義の休憩時間に自身のノートの修正や書き直しを許可したところ、手書きでノート作成をした方が復習の量が多く、事後テストの成績も良かった
タブレット手書きは慣れが大事
仕事でのノートは Google Docs に雑に書いているが、講義メモ等は Goodnotes に手書きで書いている。このようなタブレット+スタイラス方式についての実験もいくつかあった。結論は「慣れたの使え」
- Advantage of Handwriting Over Typing on Learning Words: Evidence From an N400 Event-Related Potential Index: 外国語の学習をノートPC、手書き、タブレットで行い、その時の脳波の、特に「意味を理解・記憶しているか」の指標とされるN400に注目。手書きが最も強かったが、テストの点数にはあまり影響がなかった。タブレットのツールに慣れている被験者は、手書きの指標に近づく。
- No difference in factual or conceptual recall comprehension for tablet, laptop, and handwritten note-taking by medical students in the United States: a survey-based observational study: プレゼンテーションを手書き、ノートPC、タブレットでノートを取る各グループに分け、内容についての知識と内容理解を測ったところ、特に有意な差は見られなかった。
- Exploring the impact of note taking methods on cognitive function among university students: 講義を手書きとタブレットでノートを取るグループに分け、認知テストなどの評価を行ったところ、全体的に手書きの方が成績が良かった。上で紹介した論文と同様に、デジタル機器は注意散漫が影響している可能性に触れられている。
ツールに慣れて、集中する。これに尽きる。
